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2010年7月14日 (水)

父の25回忌を前に

亡き父の25回忌の法事を行うため、この週末、父の故郷である兵庫県佐用町に帰省することになっている。

明治39年生まれの父は、戦前、満鉄調査部に勤めていたため、捕虜として旧ソ連に連行され、5年間、シベリアに抑留されていた。このため、戦争が終った後、母がまだ幼かった私と姉を連れて、苦労して日本に引き揚げてきた。父がようやく帰国できたのは、私が小学校の2年生の時で、5年ぶりに会う父の顔を忘れていた私は、なかなか父に寄り付かず、困ったと、母から後で聞かされた。

毎年、命日が近づくと、在りし日の父のことが懐かしく思い出される。今年は、たまたま、参院選があったため、選挙カーで忙しく走り回る候補者の姿や、悲喜こもごもの選挙事務所の様子などをテレビで見ながら、36年前、父(竹内正己)が大阪府知事選に出たときのことを、つい思い出してしまった。

大阪に初の革新知事が誕生したのは1971年(昭和46)の春。社共推薦で立候補した、元大阪市大教授の黒田了一氏が現職の左藤義詮知事を破って当選した。当時、桃山学院の学院長をしていた父は、同じ在阪の学者仲間として黒田知事とも面識があり、当初、黒田知事を支えるブレーン集団のひとりだった。府民の大きな期待を受けて誕生した革新知事を、側面から援助していくための母体として、京都大学字時代の恩師である末川博立命館大名誉教授、渡瀬譲元大阪市大学長と3人で、財団法人大阪問題総合研究所を立ち上げたのもそのためだ。

当時の大阪は、自然を失い、鉄とコンクリートの殺風景な都市に成り下がっていた。今こそ、大阪に関心と愛情を持つ学者や研究者が結集して、大阪の再生に取り組むべきではないか―と、フリーの立場で各自治体や諸団体に研究の成果を提案し、建言しようというのがねらいだった。

大阪問題総合研究所が軌道に乗った頃から、「黒田ブレーン」会合がスタートした。会合はいつも、知事公舎で早朝から開かれた。だが、なぜか、この会合は、4回で自然に中止されてしまう。「社・共統一知事」に対する評価は、発足当時の期待から批判へと変わり、知事の後見役をしていた父が、皮肉にも、その4年後、「社・公・民推薦の候補者」として、黒田知事と対決することになった。

当初は、渡瀬譲氏を擁立する予定で、父はその説得役として動いていたようだ。だが、渡瀬氏が健康上の理由で出馬を固辞したため、周囲の状況から、やむなく父が担ぎ出されるはめになったと聞いている。現職の知事を相手に、知名度のない新人が戦うなど、土台、無謀な話である。正式に出馬を決めた日、父は「西郷隆盛のような心境だ」と、家族にもらした。回りの動きで出ざるをえなくなった心境を、兵を挙げた時の隆盛の気持ちにたとえたのだろう。

だが、肝心の味方陣営の足並みがそろわなかった。当初、社・公・民の推薦候補に相乗りして応援してくれるはずだった自民党が、土壇場で、前副知事の湯川氏を単独で立てることになったため、票が割れて、結局、黒田知事が再選を果たす。父は湯川氏にも負ける惨敗だった。  

投票結果が出るのを、選挙事務所近くの喫茶店で待機して待っていた、あの日の時間の何と長かったことか…。当時、新聞社に勤めていた私は、職場の好意で、選挙期間中、休職して全面的に父の選挙運動を手伝うことができた。いつもは報道する側が、初めて報道される側に回り、選挙の舞台裏も渦中でいろいろと体験した。候補者本人が府内全域を隈なく回ることは到底できないため、母と私だけでなく、夫までが駆り出され、代理で演説に回らされたこともある。最初は戸惑っていた代理演説にも、選挙が終るころには大分慣れ、候補者本人より評判がいいとほめられたこともある。

今となっては、すべて懐かしい思い出の1コマだが、あの大変だった3ヶ月間のことは、生涯忘れられないだろう。

思えば、あの年の春、小学校に入学した息子は、もう42歳。2児の父である。亡き父が選挙に出たのは、68歳のときだったが、私もこの夏、当時の父と同じ年齢になる。今の私を見て、父は何というだろうか。父に負けないように、まだまだ頑張らなくちゃと、25回忌を前に、改めて心に誓った。

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コメント

お疲れ様です。お父様が知事になられていたら、今の大阪府とは違っていたのではないかと思いました。

投稿: 壮年ラガー | 2010年7月15日 (木) 21時39分

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