雨蛙の写真展
ちょっと面白い写真展に出会った。先週の木曜日、奈良労働局のあっせんの仕事で、桜井市に出かけた折のことだ。予定の時間より1時間以上前に桜井の駅に着いてしまったため、時間つぶしにと入った駅前通りの喫茶店で、たまたま、「雨蛙」と題した写真展をやっていた。遠くから見ていると、花や風景を撮った写真のように見えるが、近くでよく見ると、どの写真にもどこかにかわいい雨蛙が写っている。喫茶店の外に貼られていたポスターの写真はとくに印象に強く残ったアップで写されたピンクのハスの花の上に、小さな雨蛙が1匹、ちょこんと座り、こちらを向いている。そのポーズが何とも愛らしい。蛙は花びらにつかまるようにしてこちらを向いているのだが、花びらに隠れた下半身は、シルエットで透けて見えている。両側に広げた脚の曲がり具合やつま先の形までよくわかる。ほかにも、「古池や…」の芭蕉の句さながらに、今まさに池に飛び込む瞬間をとらえたものがあるかと思えば、青空をバックに、勇ましくジャンプする姿を遠景で写したものなど、30枚近い作品は、さまざまな雨蛙の表情や瞬間の仕草をうまくキャッチしていて、見ているだけで楽しくなってくる。
撮影者は、野口文雄さんという男性で、撮影場所は明日香村であることは。添えられた説明文でわかったが、野口さんというのは、一体、どんな人なのか、年齢は幾つぐらいなのか。また、なぜ、雨蛙の写真ばかり撮っているのだろう?と、ついつい記者根性が頭をもたげたが、残念ながら、会場に関係者はおられず、あっせんの時間も迫ってきたので、コーヒーを1杯を飲んで店を出た。
だが、家に帰ってからも、かわいい雨蛙の写真が浮かんできてどうにも気になって仕方がない。喫茶店に置かれていたDMのはがきに、撮影者の野口さんの連絡先として電話番号が書かれているのに気付き、今朝、思い切って電話をかけてみた。
「写真展を見た者ですが…」と、知らない人からいきなり電話をかけられて、野口さんもさぞ面くらったことだろう。でも、とてもいい方で、気持ちよくこちらの質問に応じてくれた。ご本人の話によると、もともとはNTTに勤めていたサラリーマンで、定年後、趣味だった写真に熱を入れるようになり、8,9年前から、ハスの花の写真を撮るために明日香村に通っていたらしい。ある時、たまたまハスの花に乗っていた雨蛙が目にとまり、あまりにかわいいのでカメラを向けたのが雨蛙を撮り始めたきっかけという。それが2,3年前のことで、以来、まいつきのように出かけては、雨蛙の姿を撮り続けているのだという。最初にハスの花を撮り始めたのが8,9年前というから、もしかしたら私と同世代なのかもしれないと、急に親近感がわいてきた。
「本当にかわいいですね。あの写真をうまく連続させて、ストーリーをつけたら、きっと素敵な絵本になりますよ」と、ついつい、おせっかいな助言までしてしまい、変なおばさんと思われたに違いない。でも、たかが雨蛙、されど雨蛙。眺めているだけで、心が癒されるほのぼのとした写真を、もっと多くの人にぜひ見てほしいと思ったのだ。
見に行きたいと思われた方は、桜井駅前通り商店街の喫茶店「think」へぜひどうぞ。写真展は今月30日まで(日曜、祝日は休み)やっている。
野口さんは、普段は主に、奈良県の各地に伝わる季節の行事の写真を撮っておられるのだという。雨蛙の写真は、ご自身の楽しみとして、その合間に撮っておられるのだろう。定年後の男性は、粗大ごみとかぬれ落ち葉などと、奥さんから厄介者扱いされるケースが多いのだが、趣味の写真を生きがいに、独自の道を切り拓いておられる姿は、“定年後の夫の鑑”だろう。
私のお節介に、いやな顔ひとつせず、「何かできないか、これから考えてみます」と言っておられた野口さん。いつの日か、雨蛙を主人公にしたかわいい写真絵本ができたらいいなと、勝手に夢をふくらませている。
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コメント
お疲れさまです。
所長、凄いですね。DMのはがきの電話番号に思い切って電話をかけてみるとは。
しかし、そういう人がいるから人間の拡がりができるのでしょうね。
なかなか見習えませんが、努力します。
投稿: 壮年ラガー | 2010年11月22日 (月) 07時49分